The Oregon Trail is the gripping account of Francis Parkman's journey west across North America in 1846. After crossing the Allegheny Mountains by coach and continuing by boat and wagon to Westport, Missouri, he set out with three companions on a horseback journey that would ultimately take him over two thousand miles――. |
フランシス・パークマン(Francis Parkman Jr.)は,19世紀半ばのアメリカ西部探検家として鮮やかな存在感を放っている.1846年,パークマンがアメリカのフロンティアに挑んだ旅は,単なる冒険譚にとどまらず,当時のアメリカ社会の変遷とその背景にある思想や価値観を反映している.パークマンは,馬車でアレゲニー山脈を越え,船と荷馬車でミズーリ州ウェストポートまで進んだ後,3人の仲間とともに馬に乗って2,000マイル以上におよぶ過酷な旅を敢行した.その道中では,数々のインディアン部族と出会い,特にスー族の中で一時的に生活を共にした.
パークマンの目を通して,読者は貿易業者や罠猟師,さらには新天地を求める移民たちの生活にも触れることができる.こうした出会いの数々が,旅を単なる「移動」とは一線を画す,19世紀アメリカの社会的・文化的ダイナミズムの縮図として描き出している.特筆すべきは,パークマンが描くグレートプレーンズの広大な風景である.アメリカの大自然が持つ畏敬の念を呼び起こす雄大さは,パークマン自身の筆致によって鮮やかに再現されている.この自然描写は,アメリカ西部の荒野がいかに人間の力を超越した存在であり,同時にその中に人間がどのように生き抜いていくかを問う文学的な試みとしても捉えられる.
本書は,単なる歴史的資料としての価値にとどまらず,アメリカの西部開拓という神話を形作り,アメリカ文明と自然との相克を体現した作品でもある.パークマンが見聞した先住民族との接触や彼らの文化は,後のアメリカ史における植民地化や先住民族の迫害の予兆を含んでおり,その意味で記述は単なる異文化交流を超えた,文明と未開という対立軸の中で捉えるべき重要な証言といえるだろう.さらに,本書は単なる冒険記ではなく,当時のアメリカ社会が直面していた問題,すなわち拡大するフロンティアとその背後にある文明化の使命を反映している.
移民たちは,単に新しい土地を求めるだけでなく,アメリカという国のアイデンティティを再定義する存在であり,パークマン自身の西部への旅における「新世界の探求」という象徴的なテーマを強調する.アメリカの荒野と文明との対立が形成する物語は,今なお多くの読者に新鮮な感動を与え続けており,アメリカ文学史における位置は不動と言える.シリーズであるOxford World's Classicsは,このような普遍的な価値を持つ文学作品を広く紹介しており,本書に対しても,専門的な序文や注釈を通じて,作品の理解を一層深める助けとなっている.
++++++++++++++++++++++++++++++
Title: THE OREGON TRAIL
Author: Francis Parkman Jr.
ISBN: 0199553920
© 2008 OUP Oxford