▼『機械としての王』ジャン=マリー・アポストリデス

君主の栄光を讃える壮麗な騎馬パレード,宮殿を舞台に繰り広げられる究極の宴.多彩な芸術が花開いたといわれる絶対王制の時代に,スペクタクルが果たした真の機能とはなんであったのか.封建的秩序と新しい価値観が並存する社会にあって,その中心に君臨し…

▼『スモモの木の啓示』ショクーフェ・アーザル

十三歳の末娘バハールの目を通して,イスラーム革命に翻弄される一家の姿が,時に生々しく,時に幻想的に描かれる.『千一夜物語』的な挿話,死者や幽鬼との交わり,SNSなどの現代世界が融合した,亡命イラン人作家による魔術的リアリズムの傑作長篇――. …

▼『海も暮れきる』吉村昭

「咳をしてもひとり」「いれものがない 両手でうける」‥‥自由律の作風で知られる漂泊の俳人・尾崎放哉は帝大を卒業し一流会社の要職にあったが,酒に溺れ職を辞し,美しい妻にも別れを告げ流浪の歳月を重ねた.最晩年,小豆島の土を踏んだ放哉が,ついに死を…

▼『映像のポエジア』アンドレイ・タルコフスキー

うちに秘めた理想への郷愁‥‥映画の可能性に応える詩的論理とは何か.映像の詩人がおよそ二十年に及ぶ思索を通し,芸術創造の意味を問いかける.その理念が有機的統一をもって結晶する〈イメージ〉.『惑星ソラリス』『鏡』『サクリファイス』など,生み出さ…

▼『ヘレン・ケラーはどう教育されたか』アン・サリバン

障害児も十分に教育可能であるということを立証したヘレン・ケラーとその教師アン・サリバン.さまざまなやりとりを通し,急速に進歩していくヘレンの様子を,サリバンの手紙を通して見つめる.障害児が十分に教育可能であることを事実で証明した本記録は,…

▼『ルーダンの憑依』ミシェル・ド・セルトー

17世紀前半,パリから270キロ南西の地方都市ルーダンで起きた,かの有名な悪魔憑き事件.数多の小説や映画の素材とされてきたこの史実を前に,私たちは一様にこう問うことだろう‥‥悪魔は本当に現れたのか?神学者=歴史家である著者ミシェル・ド・セルトーは,…

▼『悪党たちの大英帝国』君塚直隆

歴史を動かした「悪いやつら」! 辺境の島国イギリスを,世界帝国へと押し上げたのは,七人の「悪党」たちだった.六人の妻を娶り,うち二人を処刑したヘンリ八世.王殺しの独裁者クロムウェル.砲艦外交のパーマストン.愛人・金銭スキャンダルにまみれたロ…

▼『獄中からの手紙』ガンディー

1930年,ヤラヴァーダー中央刑務所に収監中のガンディーは,修道場(アーシュラム)でみずからの教えを実践する弟子たちに宛てて一週間ごとに手紙を送る.真理について,愛について,清貧について,不可触民制の撤廃について,国産品愛用運動について‥‥ただ…

▼『京都ぎらい』井上章一

あこがれを集める歴史の都・京都!そんな古都を「きらい」と明言するのは,京都育ちで,ずっと京都に住んでいる著者だ.千年積もった洛中人の毒や,坊さんと舞子さんとのコラボレーションなど,「こんなん書いてええのんか?」という衝撃の新京都論――. 千年…

▼『民衆暴力』藤野裕子

現代の日本で,暴動を目撃する機会はまずないだろう.では,かつてはどうだったのか.本書は,新政反対一揆,秩父事件,日比谷焼き打ち事件,関東大震災時の朝鮮人虐殺という四つの出来事を軸として,日本近代の一面を描く.権力の横暴に対する必死の抵抗か…

▼『火の賜物』リチャード・ランガム

「火」と「料理」こそがヒトの脳を大きくさせ,ホモ・サピエンスの出現をうながした!料理という日常の営為と人類の起源と進化を鮮やかに結びつけた文明史の傑作.われわれは料理をするときに,もはや人類の祖先に思いを馳せずにはいられない――. 火と調理が…

▼『エリック・ホッファー自伝』エリック・ホッファー

失明,孤独,自殺未遂,10年の放浪,そして波止場へ‥‥つねに社会の最低辺に身を置き,働きながら読書と思索を続け,独学によって思想を築き上げた“沖仲士の哲学者”が綴る情熱的な精神のドラマ――. エリック・ホッファー(Eric Hoffer)の人生と思想を1つの…

▼『日本の精神鑑定』内村祐之,吉益脩夫〔監修〕

精神鑑定書を同時代史の一資料として残すことは精神鑑定医の使命である‥‥『日本の精神鑑定』(みすず書房,1973年)と『現代の精神鑑定』(福島章編著,金子書房,1999年)を併せ,新たに編集を加えて一書とした新版をここに刊行する.昭和から平成初期までに起…

▼『コード理論大全』清水響

基礎から応用まで網羅した,全ジャンルの音楽家必携の標準コード理論書が登場しました.音程や転回,コードシンボルの書き方といった基本事項から,現代の和声に欠かせないマルチトニックシステムやハイブリッドコードまで,コード理論のすべてを掲載.単に…

▼『監督の財産』栗山英樹

栗山英樹監督としての集大成刊行.監督になって知った「監督の役割」「監督と人事」「監督と選手」「監督の資質」など後世に残したい経験知をまとめた848頁にわたる大作――. 野球監督の指導を通じて,リーダーシップや組織論の本質を探る848ページ.独自の指…

▼『三重の叡智』サン・ジェルマン伯爵

象徴を用いた秘儀参入への道!フランス革命前後に現れた,謎に満ちた不死の男,サン・ジェルマン伯爵の現存する唯一の自筆の神秘学書!錬金術もしくは魂の化学,エッセネ派,カバラ主義,アレクサンドリアのヘルメス主義(エジプト神秘主義)の三つの鍵を用い…

▼『クリオの顔』E・H・ノーマン

もっとも内気といわれる歴史の女神クリオにささげた随想集.現代における自由な言論の問題を論じた「説得か暴力か」など七編を含む本書から世界史研究家にして日本研究者ノーマン(一九〇九―五七)のすぐれた教養人像が浮びあがってくる.巻末に,マッカーシ…

▼『スルタンガリエフの夢』山内昌之

ロシア革命がはらむ西欧中心主義の限界をいち早く見抜いていたタタール人革命家スルタンガリエフ(一八九二‐一九四〇).彼は旧ロシア帝国のムスリム地域の脱植民地化を図ったが非業の死に斃れた.本書はイスラム世界の風土と歴史を背景にその「ムスリム民族…

▼『ゴーレムの生命論』金森修

かつてユダヤ教の世界で,魔術の修得の証とされた人造生命〈ゴーレム〉.その不遜で不敬な夢は,形を変えて現代科学のうちに継承され,現実のものとなりつつある.いま,命の在り方が根本から問い直される.二一世紀,倫理は新たな局面へ‥‥生命創造の「実現…

▼『ある翻訳家の雑記帖』新庄哲夫

翻訳家は余計なこと(?)をする!名訳者による熱意のこもった「訳者あとがき」大全.翻訳生活40年にわたる訳業のなかから62編の「あとがき」を選んだユニークなエッセイ集――. アメリカ文学を日本に紹介する翻訳家と同時に,ジャーナリスト,編集者,大学教授…

▼『蒼ざめた馬』B・ロープシン

秋の夜が落ちて,星が光りはじめたら,わたしは最後の言葉を言おう‥‥20世紀黎明のロシアの漆黒の闇,爆弾を抱えて彷徨するテロリストたちの張り詰めた心情と愛と孤独.社会革命党(エスエル)戦闘団のテロ指揮者サヴィンコフがロープシンの筆名で発表した終…

▼"Edmond Holmes and Progressive Education" John Howlett

Although considered a figure of great importance and influence by his contemporaries, Edmond Holmes has been consigned to relative obscurity in the progressive educational tradition. This book reinstates Holmes as a key figure in the histo…

▼『告白』湊かなえ

「愛美は死にました.しかし事故ではありません.このクラスの生徒に殺されたのです」我が子を校内で亡くした中学校の女性教師によるホームルームでの告白から,この物語は始まる.語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり,次第に事件の全体…

▼"Samuel John LLewellyn Morgan Orchard" Ms Suzanne Helen Orchard, S. Walter Orchard

This is a true, stirring story of adventure, love and tragedy, recounted mainly through the exquisite letters written by Samuel Orchard. The first part of the book depends on the letters written by Trooper Orchard of the Imperial Yeomanry …

▼"1177 B.C." Eric H. Cline

In 1177 B.C., marauding groups known only as the "Sea Peoples" invaded Egypt. The pharaoh's army and navy managed to defeat them, but the victory so weakened Egypt that it soon slid into decline, as did most of the surrounding civilization…

▼"Sing Me Down from the Dark" Alexandra Corrin-Tachibana

Sing Me Down From the Dark explores the highs and lows of a ten-year sojourn in Japan, two international marriages, a homecoming, and the struggles of cross-cultural relationships. It is full of light and dark, as if the writer herself has…

▼"Apples and Orchards Since the Eighteenth Century" Joanna Crosby

Showing how the history of the apple goes far beyond the orchard and into the social, cultural and technological developments of Britain and the USA, this book takes an interdisciplinary approach to reveal the importance of the apple as a …

▼"Drawing the Iron Curtain" Maya Balakirsky Katz

In the American imagination, the Soviet Union was a drab cultural wasteland, a place where playful creative work and individualism was heavily regulated and censored. Yet despite state control, some cultural industries flourished in the So…

▼"The Last Man Who Knew Everything" Andrew Robinson

Physics textbooks identify Thomas Young (1773-1829) as the experimenter who first proved that light is a wave--not a stream of corpuscles as Newton proclaimed. In any book on the eye and vision, Young is the London physician who showed how…

▼『暗い谷間の自伝』大河内一男

著者の回想は,第一次大戦の軍需景気に沸き立つ東京の下町での少年時代から,俊英少壮の学者として迎えた敗戦の日にまで及ぶ.日本現代史を背景に,苦悶と焦燥のうちに過ごした暗い激動の日々を描く.特に直接関係のあった「河合事件」の記録は圧巻である――.…